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赤い服の透明な少女 [春秋庵-日々の消息を語る草庵-]

 美女というのは、一瞬にして世を明るくできるものではあるが、装いもそうであるというのは珍しい。たまたま飛行機で同席したその女性は、横顔は色白の穏やかな、新垣結衣のような透明感のある顔立ちをしていて、目線を伏せるでもなくあげるでもなく自然に保っていた。自分が美しいことを知っている人の所作だ。上には目にも鮮やかな真っ赤なニットのカーディガンを白いシャツの上に来て、下にはこれも鮮やかと云える黒のスカートを履いていた。裾にはフリルが入っている。
 ここまで書いてわかると思うが、妙といえば妙な格好である。原色の赤と黒の組み合わせはよくあるが、ふつうはシャツとパンツで組み立てるものであり、カーディガンとフリルの柄の入ったスカートなどでどうこうするものではない。しかしその人は、ふわふわと、その服を着ていた。しっかり来ているのではない。似合っている、というわけなのでもない。ふわふわと、所作なく無理なく服をまとい、そのまいとかたが何とも美しいのだ。
 自分が美しいことは知っているのだろうが、それも無意識なのだろう。ふわりふわりと服を着て、イヤホンを耳に入れてふわりふわりと音楽を聴く。そのふわりふわりのまま、私の目にふわわふとした印象を残して飛行機を残して歩き去った。信じられないほど早足で。あれは果たして、本物か。本物なのだろうが、私が勝手に彼女に残像を投影したものなのだったのかもしれない。
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